CNBLUEのBL小説ブログです。ヨンファ溺愛主義で、シンヨン&釜山ズ&ミニョヨンの話を書いています。

DESTINY 1

2016年03月08日
DESTINY 0






初めて出会った時からずっと弟のように思っていたのに、それが少しずつ変わっていったのはいつからだろう。


同じ目標を持った仲間として一緒に高みを目指し、寝食も共にし、いつしか家族以上のかけがえのない存在になっていた。


時には苦労や挫折を経験し、試練を乗り越え、喜びも悲しみも分かち合った。
どんな時も笑ってくれて、誰よりも俺のことを理解し支えてくれた。


順風満帆にここまで来たわけでは決してない。意見の相違や感情のすれ違い、喧嘩もたくさんした。
そして、ようやく気が付いた。


自分にとって何が一番大切なのかということに―――。







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自分にとっての原点は、すべてあの時から始まった。





ジョン・ヨンファは18歳の時、釜山でスカウトされて、オーディションに合格し、FNCエンターテイメントの練習生となった。


そして、20歳の時、ヨンファがリーダーとなり、イ・ジョンヒョン、カン・ミニョク、クォン・グァンジンとともにCNBLUEが結成された。
それと同時に、事務所から武者修行という目的でバンド文化が盛んな日本へ行くように要請された。
成果を挙げればデビューすることができるという望みを持ち、四人は期待に胸を膨らませて出発した。
しかし、そこで待ち受けていたのは過酷な日々だった。


四人に課せられたのは、ストリートやクラブなどでライブ活動をすることだったが、少し楽観視していたのかもしれない。
無名のヨンファたちが異国の地でやっていくのは想像以上に大変で、自分たちがいかに甘い考えを持っていたかを痛感した。
何度も挫折しそうになったが、お互いに支え合い励まし合いながらライブ活動を続けた。
音楽への情熱がなければ、あの辛い時期を乗り越えることはできなかっただろう。


そんな先が見えない状態の時に、突然グァンジンが脱退し、代わりにイ・ジョンシンが新メンバーとして加入した。
ジョンシンはヨンファよりも後に入ってきた練習生で、中性的で綺麗な顔をした2歳年下の高校生だった。
この頃は身長が自分より少し高いくらいで、身体つきもまだ華奢だった。


『はじめまして。イ・ジョンシンです。よろしくお願いします』


初めて対面したジョンシンは心なしか緊張しているようだった。
ヨンファは社交的ですぐに誰とでも親しくなれる特技を持っていたので、ジョンシンにも洋服の話題などで積極的に話しかけて、仲良くなっていった。


そんな練習生だったジョンシンが突如CNBLUEのメンバーに選ばれたことに、ヨンファは大して驚きはしなかった。
ヨンファたちと同じような経緯で練習生になったジョンシンには、類まれなる存在感とその目力が既にこの頃から備わっていた。
そして、ベースの腕前もすごく良かった。
学校の授業が終わってから終電までずっと練習に打ち込んでいたのを、ヨンファは側で見ていた。
真面目で愛嬌があるジョンシンはすぐにメンバーと打ち解け、名実ともにCNBLUEになくてはならない存在になるまでに、そんなに時間はかからなかった。


そんな中、ヨンファが初めてのドラマの仕事で一人韓国に戻らざるを得なくなった。
その間はジョンヒョンがリーダーとなり、三人でライブ活動を続けていくことになった。


ヨンファが帰国する際、彼らは笑って送り出してくれたが、内心は心細かったに違いない。
頼りになったかどうかは分からないが、一番年上でリーダーの自分がいなくなるのだから。
もしかしたら、不満もあったかもしれない。


それでも、四人で誓い合った。離れ離れになっても、自分たちの未来のために頑張ろうと。
辛くても我慢して前向きにやっていれば、必ず道は開けてくるだろうから、希望を持っていこうと。


三人には言わなかったが、この単独の仕事の結果によって、今後のCNBLUEの運命が決まるような気がしていた。
だから、当初、「演技をする」ことに迷いがあったが、同年代の共演者たちから様々なことを学び、切磋琢磨しながら乗り越えていった。


日本に残してきた弟たちのことは常に頭から離れなかった。
元気でやっているか。ちゃんと飯は食べているのか。狭い宿舎で、不安な日々を送っていないか。
ヨンファ自身も経験したからこそ、痛いほどよく分かる。


そして、ヨンファが出演したドラマが放送され、大ヒットしたことがきっかけで、CNBLUEはついに念願のデビューを果たすことができた。







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それから四年。


発売する曲が次々とヒットし、今では本業の音楽だけでなく、ドラマやバラエティー番組、司会等さまざまな個人での仕事のオファーがあり、多忙な日々を送っていた。


世間から注目を浴びるようになると、それだけ身なりにも気を遣うようになった。
ヘアースタイルを定期的に変えてイメチェンを図ったり、スタイリストヌナのおかげでファッションにもかなり精通するようになった。


―――そう。一人、かなりイメージが変わった奴がいるが……。


その張本人に目をやると、事務所の練習室の隅でミニョクとふざけ合っていた。





新しいミニアルバムのレコーディングを目前にして、今日は久々にメンバー全員が集まって音合わせをしていた。
ちょうど今は休憩中で、ヨンファは椅子に座ってミネラルウォーターを飲みながら、次に演奏する曲目について確認作業をしていた。


ジョンヒョンは一人でどこかへ行ったようで、二人の弟たちは相変わらず楽しそうに笑い合っていた。


ヨンファはもう一度ジョンシンに視線を向けた。
無邪気なところは変わっていないが、見た目は随分と大人っぽくなった。
短い黒髪にして、筋トレを始めてからは急にガタイもよくなり、男らしくなった。


―――茶髪でサラサラのロングヘア、結構気に入っていたんだけどな。…アイツには言ってやらないけど。


背も随分伸びて、話をする時はいつも見上げなければいけないから、ついつい首が疲れてくる。
メンバーの中で一番背の低い自分からすると羨ましい限りだが、ジョンシンはその長い脚を持て余していて、本人なりに悩みがあるようだった。





「あっ、ヨンファヒョン、ちょっと教えてもらってもいい?」


じっと見つめていると当の本人とバッチリ目が合い、譜面を持って近寄ってきた。


「どうした?」
「ここなんだけど…」
「ん?どれどれ。ああ、これはな……」


一緒に譜面を見ながら、ひと通り説明してやる。
ジョンシンは非常に真面目で、仕事に対しても真摯で前向きだった。
分からないことがあれば放置することなく、誰かしらに訊いている。
そういう姿勢があるから、途中からCNBLUEに合流しても上手く皆と合わせることができたのだろう。


「あっそういうことか。なるほど。ありがとう、ヨンファヒョン」
「いいよ。何かあったらいつでも訊いて」


ヨンファの説明に納得してくれたようなので顔を上げると、ジョンシンがじっとこちらを見つめていた。


「何?どうかしたか?」


訊ねると、真剣な顔をしたままジョンシンの手が頬に触れてきた。


「瞼が二重になってるけど、疲れが溜まってるんじゃない?大丈夫?」
「ああ…、ちょっとバタバタしてるから、寝足りてないのかも」


あまり自覚をしていなかったが、今年はシングルとアルバムの発売や海外ツアーが控えていて、何かと慌ただしくしているのは事実だ。
やることがたくさんあり過ぎて、ややパニック状態に陥りそうになるけれど、優先順位をつけてミスのないように取り組んでいる。


「でも、それはお前だって同じだろ。ちゃんと睡眠とってるか?」
「俺は寝てるから平気だけど、ヒョンの方が心配。俺たちの中で一番忙しいから、ぶっ倒れないかってハラハラするよ。
俺に手伝えることがあったら何でも言って」


グループの活動以外に個々での仕事もあるから、四人のスケジュールは皆バラバラだったりする。
だから、同じ宿舎と言えど、帰宅する時間が異なり顔を合わさない日もあるから、こうやって気にかけてもらえるのは素直に嬉しい。
やはり仲間の存在の大きさを改めて感じる。


「サンキュ。そうならないように気を付けるよ。でも、お前に心配されるようじゃ、俺もおしまいだな」


わざとおちゃらけて笑いながら言い放った。
ジョンシンはヨンファが何か言ってもすぐさま気の利いた返しをするから、そこからふざけ合いに発展するのが日常茶飯事になっている。
だから、この時もそれを見越してのことだった。


ジョンシンのリアクションが面白いから、ついからかったり余計なひと言が口を突いて出てしまうけれど、それは相手がコイツだから―――。
遠慮がなくて、いつでもどんな時でも甘えられる。自分にとって一番気を許している弟だから…。
でも、この日は違っていた。


「俺が心配したらそんなにおかしい?」
「えっ……?」


まさか、そんな言葉が返ってくるとは思ってもみなかったので、驚いてまじまじとジョンシンを見る。
やや怒ったような真顔をしているから、ジョークではなく本気で言っているようだ。


「俺ってそんなに頼りない?マンネだから?」
「い、いやっ…そういう意味で言ったんじゃなくてっ……」


ヨンファに対していつも穏やかなジョンシンが急に言い返してきて、しどろもどろになる。
何か気に障ったんだろうか。


数秒間見つめ合った後、ジョンシンはふいっと練習室から出て行った。


「あっ、おいっ……」


慌てて呼び止めたが、無視されてしまった。





多少、気まずく思っていたヨンファだったが、休憩が終わり、練習を再開した時には、もういつものジョンシンに戻っていた。







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今日は久々に、テレビ局のスタジオでバラエティー番組の収録が行われた。


CNBLUEの音楽しか知らないファンに、自分たちの別の顔を知ってもらう良い機会なので、こういう仕事は非常に有難い。


話術巧みなMCの二人のおかげで皆リラックスして、楽しい雰囲気の中進んでいく。
ヨンファは他のメンバーの様子を見ながら、時々面白可笑しく茶々を入れたりして、場を盛り上げてみせた。


トーク、ゲーム、ダンス、電話コーナーと様々な内容で構成されていて、番組の終盤に「りんごゲーム」なるものをすることになった。


MCの一人とミニョクがお手本を示してくれて、だいだいどういうものかが分かった。
それは、二人の額の間にりんごを挟み込み、落とさないように額から臍の辺りまで手を使わずに移動させるというゲームだった。


まず、ジョンヒョンとミニョクが挑戦したが、二人は初めてとは思えないほど自然に身を寄せ合って、りんごを動かし始めた。
まるで恋人同士のような雰囲気で、ヨンファは恥ずかしくなって見ていられなかった。


こういうシーンは女の子に非常にウケがいいらしく、番組側もそれを狙っての演出なのだろう。
そうこうしているうちに、ヨンファとジョンシンの番が回ってきた。





ヨンファがりんごを持って二人の額の間に挟もうとした時、目の前ほんの数センチ先のジョンシンに照れてしまい、
ついジョークで失礼な発言をしてしまった。
そして、改めて挟んでみるも、照れまくって中断した。


―――仕事だから、ちゃんとやらないと。俺の方が兄貴なんだし……。


気を取り直して再度チャレンジしてみるが、先程の二人ほどスムーズにはいかなかった。
身長差があるからなのか、りんごが思うように動いてくれず、至近距離で見つめ合いながら、ヨンファは自分の顔が赤くなるのを感じた。


お互いに正面を向いて始めたが、だんだんとりんごが変な方向に動きだして、顔の横で挟み込んだところからコミカルな展開になった。
二人が変な格好になりながらも何とかりんご落とさずにいると、その姿が可笑しいのか、周囲から笑いが漏れてくる。
そして、身体を密着させて何とか臍の辺りでりんごを止めて、ゲームオーバーになった。


結構な時間がかかってしまい一時はどうなるかと思ったが、番組的にはおいしい方向に持っていけたかなと、ホッと胸を撫で下ろす。
視聴者や番組スタッフに良い印象を持ってもらえれば、また次の仕事に繋がる可能性もあるだろうから。


表向きは、照れ笑いをしながら平然としたふりをしていたヨンファだったが、内心、鼓動が早くなっていた自分に戸惑っていた。







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それから、日本でのメジャーシングル発売に向け、途端に忙しくなった。
日本各地で立て続けにライブをこなし、その後、香港でも2日間の予定でライブが開催された。


その香港での初日のライブ中に事故は起こった。





エンディングでファンへの挨拶周りにメンバー全員で花道を歩いていたところ、突然ジョンシンが落下したのだ。


その瞬間、心臓が止まるかと思った………。


しかし、ヨンファはすぐに気持ちを切り替えて、事態の収拾を図った。
自分たちが動揺していてはファンに不安を与えることになる。それだけは避けなければ。


下でスタッフに救助されているジョンシンの様子を窺いながら、ジョンヒョン、ミニョクともにジョンシンは大丈夫だとファンを安心させて、何とか事なきを得た。
冷静に対処したことにより、大きな騒動にならず、無事一日目を終えることができた。


幸いなことに、ジョンシンは左手に軽い怪我を負ったが、思ったほどひどくはなく、、翌日のライブも予定通り出演した。





香港での仕事を終え帰国した際に、空港で待ち受けるファンからは、ジョンシンのお見舞いも兼ねてなのか、
花束やプレゼントなどを渡そうとするファンがいつもより多かった。
自分たちの代わりにスタッフが受け取ってくれ、それが宿舎に届けられた。





「こんなにたくさんもらって、ホントに有難いね」


宿舎のリビングのソファーに座っていたジョンシンが、隅に山積みにされたファンからの贈り物を見てポツリと呟く。
心なしかいつもより元気がない。


「ジョンシナは皆から愛されてるもんな」


ヨンファの言葉にミニョクとジョンヒョンも同調する。


「そうそう。でも、突然ジョンシナが消えた時は生きた心地がしなかったよ」
「ヨンファヒョンが落ち着いていたから、俺たちも救われたけどな。マジで心臓に悪すぎる」


二人の言葉にジョンシンが項垂れる。やはり本人も相当ショックだったようだ。


「みんなに迷惑かけてごめんなさい。これからは気を付けます…」


ファンに喜んでもらおうとしたことが結果的にこうなってしまったけれど、ジョンシンはとてもファン思いで、心優しい奴だった。
ヨンファはそれが痛いほどよく分かるから、元気のないジョンシンを思いっきり抱き締めてやった。


「ジョンシナの気持ちはちゃんと皆に伝わってるよ。たから気にするな。でも、怪我には注意しような。
俺たちは一人でも欠けたら、俺たちでなくなるんだから」


笑顔でそう言って髪の毛をクシャと撫でてやると、ジョンシンは嬉しそうに笑って強い力で抱き返してきた。


「うん。ありがとう!」


そして、ジョンヒョンとミニョクも代わる代わるハグして慰めていた。


「それよりも、腹が空いたから早くお昼にしようぜ」


湿っぽい雰囲気を追い出すかのように、ヨンファがソファーから立ち上がった。
すると、他の三人も同じようにダイニングテーブルへと移動した。


今日は全員が丸一日オフだったので、昼食は事務所からの差し入れを四人で食べて飲んで、
その後は皆各々の部屋で好きなことをして過ごした。





「ヨンファヒョン、りんごゲームしよう~」


ベッドに仰向けになって雑誌を読んでいると、ノックの音とともにジョンシンが入ってきた。
落ち込んでいたのが嘘みたいに元気になって、その手にはりんごを持っている。
ビールも何本か飲んだので、より一層気分が高揚しているのかもしれない。


「はぁ~?何だよ、いきなり」
「前回のリベンジ。ジョンヒョニヒョンとミニョクより俺たちの方が時間かかっただろ」


ヨンファのベッドの側まで近づいてきて、覗き込んでくる。


「ええー。わざわざ買ってきたのか?」
「そうじゃなくて、ファンの子にもらったものの中にあったんだ」


ああ、なるほど。お見舞いということで果物も貰ったわけか。
って、納得している場合じゃない。
時々コイツは突然突拍子もないことを言い出す時がある。まったく子供っぽいところがあるというか、やっぱりマンネだな。


「ヤダよ。面倒くさい」
「えー、いいじゃん。ちょっと付き合ってよ」
「負けず嫌いかよ」


すると、ジョンシンは口を尖らせて拗ねたような顔をする。
男らしくなったけど、こういう可愛い仕草をするところは昔から変わらない。
ヨンファは可笑しくなって、つい吹き出してしまう。


一度言い出したら聞かないからなコイツは。変なところで頑固なんだから。


「もう、しょうがねぇなぁ。一回だけな」
「やった!」


読んでいた雑誌を置いてベッドから身体を起こすと、ジョンシンの目の前に立つ。


「お前さ、背ぇ高すぎるから難しいんだよ。だから、この間だってなかなか上手くいかなかっただろ」
「今日は大丈夫。もうコツは掴んでるから」


……ホントかよ………。


胡乱な目で見てやると、ジョンシンは収録の時と同じように膝を曲げて、ヨンファの顔にそっと顔を近づけてきた。
まるでキスをされるのかと思うような至近距離にドキリとする。
そっと額へとりんごを押し当てられた瞬間、


「冷てっ」


ヨンファは思わず声を上げて、後ろに身体を引いた。


「さっきまで冷蔵庫に入ってたから」
「マジかよ。冷えてないりんごは?」
「ないよ」
「ええーっ。何だよ、それっ」


いくら初夏の昼下がりと言えど、身体に押し当てるには冷たすぎる。真夏なら逆に気持ち良いのだろうが。
しかし、ジョンシンはどこ吹く風で、まったく気にしていない様子だった。


ヨンファはぶつぶつ云いながらも、渋々付き合ってやることにした。
部屋の中で男二人がりんごゲームをしている図なんて、よくよく考えてみると何とも滑稽としか言いようがない。
何か話していないと間が持たない気がして、ヨンファは「冷たい」を連呼していたが、反対にジョンシンは急に口数が少なくなった。


タイミングを計りながら力を加減して、りんごを少しずつ下にずらしていく。
二度目なので以前よりはスムーズに進んでいく。


「……なんか、誰も見てないところでやるのって変だよなぁ」
「そう?」


やっぱりこういうゲームは大勢の中でやってこそ盛り上がるもので、相手が女の子だともっと楽しいだろうなと思う。


鼻から頬を辿り口元へ移動し、二人の胸元の間にストンと入ったりんごを落とすまいと咄嗟に片手をジョンシンの肩に回した。
すると、強く抱き寄せられて、身体がより密着する。


―――りんごは二人の臍の辺りで止まった。


「ほら、終わったぞ」


しかし、ジョンシンは何も言わなかった。
押し付けられたジョンシンの胸板と腕の中で、ヨンファはじっとしていた。
何故だか、不意にこの温もりを心地良いと感じてしまった。
そんな心の中の動揺を悟られたくなくて、わざと突き放すような言い方をする。


「もう離れろよ。これで気が済んだろ?」


これ以上このままの体勢でいたら、何だかまずいことになりそうな、そんな得体の知れない予感がした。
脈もいつもより早くなっているような気がする。


早く離れないと―――。


「まだ済んでない」
「一回だけって約束だろ?。俺、さっきの続きを読みたいんだからっ」


ジョンシンの身体を離そうと腕を突っ張るが、抱き込まれているせいかビクともしない。
最近のジョンシンは何だか変だ。遅れてきた反抗期みたいだ。
仕方なく、りんごを掴んでどうしようかと思案していると、ジョンシンがそれを奪い取ってベッドの上へ放り投げた。


「……ジョンシナ?」


ようやくジョンシンの様子がおかしいことに気が付いた。
普段あれほど饒舌でハッピーウイルスを撒き散らすほど笑顔が絶えない奴なのに、急に黙り込んで何を考えているのか分からない。
そもそも、こんなゲームをやろうと言い出すことも意味不明だ。


「おーい、酔ってんのか?」
「…………」
「どうかしたのか?お前、この間から変だ…ぞ…?」


顔を上げると、瞳と目が真っ向からぶつかり合う。
ジョンシンは思い詰めたような、苦渋に満ちた表情をしていた。
こんな辛そうなジョンシンは今まで一度も見たことがない。
何か心配事でもあるのだろうか。それとも、やっぱり酔っているだけなのか?


再び口を開こうとすると、唇にジョンシンの指が触れてきた。


「ジョンシ…ナ…?」
「黙って」
「…っっ………」


いきなり呼吸を塞がれて、それ以上言葉を発することができなかった。
頭の中が真っ白になる。


―――ナンダコレ。



唇に湿った熱を感じて、ようやく事態が呑み込めた。


ジョンシンにキスされている―――。


ヨンファはスキンシップが割と多い方で、相手の肩に腕を回したり、ふざけ合って抱きついたりすることがある。
それはジョークの上での遊びで、ジョンシンだけでなく、ジョンヒョンやミニョクともそうだし、他の遠慮のない奴ともじゃれ合ったりしている。
でも、同性とキスをしたのは初めてだった。


すぐに「ジョークだよ」って笑って言ってくるかと思ったが、ヨンファの意に反して離れる気配がない。
重なった唇からアルコールの香りと苦みが伝わってくる。


これは本当に洒落にならないと、頭の中に赤信号が灯る。
ジョンシンの思いのほか逞しい胸板を押し返して唇からは解放されたが、逆に手首を掴まれ、身体を反転させられる。


「……ジョークにしてはタチが悪すぎるぞ」


上目遣いで睨んでやるが、ジョンシンの力は一向に緩まない。
いつもならすぐヨンファの言うことに従うのに、今日に限ってまったく聞く耳を持とうとしなかった。


両手首を掴まれたまま強い力で身体をドアに押し付けられ、抵抗を封じこまれる。
そして、今度は息もつかせぬほどの激しい口付けが降ってきた。


「…んんっっ……」


いきなり舌が差し入れられ、驚いたヨンファの逃げ惑う舌を追いかけては絡めてくる。


すぐにやめさせないと―――。


頭では分かってはいるものの、ジョンシンの巧みなキスに翻弄され、身体から次第に力が抜けていく。
ヨンファの赤みを帯びた唇を思うさま貪りながら、シャツの上から胸の先端を手で探り当ててきた。


「あっ……」


思わず仰け反って白い喉を晒すとジョンシンの唇がむしゃぶりついてきて、そこら中にキスの雨を降らせる。
ヨンファは勢いに押されて、訳が分からなくなってきた。


「ジョン…シナ……やめろ……」


息も絶え絶えに言うと、いつの間にかシャツのボタンを外されて、唇が胸にまで下りてきた。
触れられて敏感になっていた先端を口に含まれ、身体中に痺れが走った。


「ンアアッッ…ッ……」


今まで出したこともないような声が口をついて、咄嗟に唇を噛む。
ドクドクと奥の方から次第に熱くなってきて、自分の意思とは関係なしに反応しだす身体に戸惑いを隠せない。
ジョンシンの頭を抱き寄せて身を委ねそうになる自分が怖くなって、本気で抵抗しようとした途端、


コンコン!


身体を凭れさせていたドアが突然後ろからノックされて、ヨンファは飛び上がるほど驚いた。


「ジョンシナーいる?ちょっと手伝って!」


ドアの外からミ二ョクの大きな声が聞こえた。
慌ててジョンシンの身体を押し退けドアから離れると、ヨンファは肌蹴たシャツの前を合わせる。
心臓が大きく脈打ち、乳首が熱を持ってジンジンしていたが、震える手で何とかボタンを留めていく。


「分かった!今、行く!」


ジョンシンが返事をすると、ミニョクは部屋には入って来ず、また戻って行ったようだった。


気が動転して何も考えられないヨンファとは逆に、何事もなかったかのように平然と振る舞うジョンシンに驚きを隠せなかった。
どんな顔をしているのか見る勇気すらなく、ジョンシンに背を向けたまま、乱れていた息を整える。
時間にすると数秒か数十秒か、二人はお互いに無言だった。


そして、


「ごめん…」


一言だけそう言って、ジョンシンは部屋から出て行った。


一人部屋に残されたヨンファは、まるで金縛りにあったかのようにその場から動けなかった。
自分の身に起きたことが信じられなくて、放心状態に陥っていた。


ごめん?
ごめんって何だよ。
一体、何に対しての謝罪なんだよ。
興味本位?欲求不満?それとも誰かの身代わりか?
魔が差したってやつか?
それとも、酒に酔っていたからなのか?
ふざけるなっ。


ジョンシンに対して言えなかった言葉が、次から次へと溢れ出てくる。


ヨンファは力が抜けた身体を引きずって、ベッドに腰をかけた。
同性相手なのに触れられた箇所が火照って、その上、下半身まで熱を帯び始めていた。
それは、ある意味ショックだった。
自分の身体が自分のものでないような錯覚に陥って、どうしていいのか分からない。


もし、あのままミニョクが来なかったら、どうなっていただろう。
ジョンシンがどういうつもりでああいう行動に出たのか、今は何も考えられない。
考えたくもない。


ただ、入ってはいけない道に迷い込んだような気がして、ヨンファは暫くその場から動くことができなかった。





To be continued





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haru
Author: haru
CNBLUEのBL小説を書いています。CPはシンヨン&釜山ズ&ミニョヨンです。ヨンファ溺愛主義でとんでも妄想ばかりですが、愛だけはぶっこんでいます。
話のトーンはほのぼの、甘々、コミカル、シリアス、切ない系。ハピエンオンリーです。
基本マイペースでランダム更新。妄想は思いつくまま、気の向くまま。R18の内容が含まれているため、未成年の方、苦手な方は閲覧にはくれぐれもご注意下さい。
尚、当ブログに掲載している作品はすべて私個人のオリジナルですので、模倣、転載等はご遠慮願います。

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